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第6話

禅士ジャズに浸る
(H14.12.22開設)

BY 又の名瞑想禅士




rei様のお供で禅士様は横浜ジャズプロムナードに行かれました。


ある風景 Lazy Bird

まず、ピアノがちょこちょこと、軽いテンポで始まる。
いきなりアルトサックスが全力でスタート、テーマを全員で奏でる。

32小節のテーマが流れた後、アルトサックスのアドリブが始まる。
永遠のテーマを、思いを込めて、強く、弱く、大きく、小さく音が流れていく。
ジャズは感動の嵐であり、喜びの川である。
波動を、揺れ動くハートを、生きている証を、存在としてここに見せてくれる。

ラスト8小節前、次にアドリブを渡すぞという合図。
ギターにバトンタッチ。
時々不協和音を奏でながら、優しく、逞しく、宇宙をさまよう世界が見え始める。
メロディーラインを感じながら、プラネタリュームの光のように、早引きのフレーズが目まぐるしく交差する。

途中でピアノが揺さぶりをかける。
今日はいつもと違うぞ。
いいことがあったのか、乗りがいいな、と話しかける。
ぼちぼち替わるぞ、という合図。
ピアノにバトンタッチ。
高音部でのメロディーフレーズをばらして、コード進行が洪水のごとく流れてくる。
悲しいけれども笑うしかない道化師のピエロの振る舞いのように、唸り、叫び、呻き、逃げ場のない想いが音となって、感性のるつぼとして心の中に染み込んでいく。
また、単調な音の繰り返しの中にも、ジャズの陶酔した世界が構築される。

メロディー楽器がひととおり終わると、ベースが軽やかなリズムから解放され、魂を揺さぶるアドリブが始まる。
低く低く、重く重く、底に沈みそうな音。
静かに静かに耐え抜いていたウッドベースが、一気に高音部に駆け上がり、切ない、やるせない願いを込めて、とつとつとメロディーが浮かび上がらせる。

ラストはドラムスの出番。
これまで溜めていたエネルギーを一斉に解き放す。
ドラムスにも音程がある。メロディーがある。
太古の昔から喜びを哀しみを表現してきた太鼓の響きは腹に応える。
アフリカの大地からの風が心に伝わってくるようだ。

ドラムスの持ち分はいよいよ終わり。
おもむろにテナーが吠える4小節。
今日の調子はどうだい。
今日もいい気分ドラムス4小節。
ギター問いかける4小節。
しっくりとした気分だねドラムス4小節。
ピアノがしゃしゃり出る。こんな風についてこられるかい4小節。
こんなに激しく踊っているよドラムス4小節。

掛け合い挨拶が終わった頃、テナーが思い切りテーマを4小節ぶちかます。
そして、ジャズの船に乗った全員でテーマを締めくくる。
苦しみ、哀しみ、嘆きの光が、大きな固まりとなった。
涙が溢れ、身震いをしたまま呆然と立ちつくす。

完全にとけ込んだ、燃焼した音の世界がそこに漂っていた。

レィジーバード
怠惰な鳥
あほうどり、狂った鳥、かわいい鳥。


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